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2 乳の匂い 【1】

2 乳の匂い


ドアを叩く音が聞こえた。

四つん這いでららのペニスを受け入れていた俊英の身体がビクッと反応した。硬く勃起したペニスを出し入れしてたららの腰の動きも止まる。ドアを叩く音がさらに二度、三度と苛立たしげに強く響いた。振り向いた俊英が上半身を起こして言った。

「僕がでる。これ、取ってもらっていいかな」

ららが手枷を外すと俊英は浴衣を引っ掛けてドアへ向かった。

(ドアを開ければ、ベッドにいる姿が外からでも見える……)

ベッドから降りたららは、床に落ちていたバスタオルを胸にあて、来訪者から見えないように部屋の隅に移動した。

俊英がドアを開けると訪問者が部屋に入ってきた。

――伊丹蘭だった。

蔑むように蘭はららの身体をじっと見た。麝香の匂いが部屋に満ちる。六年前と同じ匂いだ。

蘭はららに近づくとバスタオルを奪い、いきなり乳房を鷲掴みにした。

「アニマ神は、ご自身に似せて人間を創ったの。男と女にね。なのに、これはなに?」

ららは身を捩って抵抗した。

「痛い、止めてよ」

乳房を掴んだ手に蘭はさらに力を込める。

「男の身体に女のおっぱいなんか付けて……。ねえ、神がこんなおかしな姿をしていると思うの、あなたは?」

微笑みを浮かべた俊英が二人の間に入る。

「らら、時間を延長できないだろうか?」

蘭の手を振りほどいたららは、声に怒気を込めて答える。

「三十分延長で1万2000円だけど……。でも、まだ時間は残ってる」

「できるだけ長時間、延長したい」

「一番長いのは、『のんびりデートコース』……五時間で七万円」

「それにしてほしい」

蘭と目を合わせないように視線を泳がせながら、ららは俊英に聞いた。

「三人でするの? それは別料金をもらうことになってるんだけど」

「もちろん、三人でするの。昔みたいにね」と、蘭が嘲るように答えた。

ららは蘭を睨みつける。

「全部、前金でお願いできる? お金を前金でもらうのは、お店のきまりなの」

「前金で払う」と答えたのは俊英だった。

少し考えて、ららは返事する。

「わかった。お店に電話してみる」

ららは店の事務所に携帯で電話をかけ、あとに指名が入ってないことを確認してから、客が一人増えたことと、彼らが「のんびりデートコース」を希望していることを伝えた。――同窓会、盛り上がってるみたいだな?――店長にそんな嫌味を言われたので、代金は前金でもらうことも話した。

「お店に、了解もらったけど……」

電話の途中でららは振り返る。俊英は、蘭が服を脱ぐのを手伝っていた。ららのデニムはソファに放り投げられ、代わりに蘭の麻のジャケットとパンツがハンガーにかけられた。はい、と一つ返事をしてららは電話を切った。

裸の蘭がららに近づいてくる。あれから六年。照明を暗く落としたホテルの部屋でも輝いて見える蘭の褐色の肌。四十歳を過ぎているはずなのに衰えるどころか身体つきはより豊かになり、その魅力を増しているようにも思える。

蘭はららの頭を掴むと、胸にその顔を押し当てた。ららはあえて抵抗しなかった。金をもらった以上、相手は客だ。そう、単なるお客さま……。

「匂いがわかる?」と、蘭に聞かれた。

蘭の胸の谷間に埋まったららは、その匂いを嗅ぐ。強い麝香の香りの奥には、微かに「乳」の匂いが存在する。

「これが、女の匂いよ」

そんなことは、ららにもわかっている。どれだけ身体を改造しても、どれだけ女性ホルモンを補充しても、ららの身体が乳の匂いを発することはない。筋肉が生み出す男の硬い匂いは抜けないのだ。

(でも、それがなに!)

「あなたと俊英が、わたしの許可なく二人きりで性関係を持っていたことを知ったとき、わたしはひどく傷ついた。ほんとうにひどく、傷ついた。貪欲に自分を満たそうとしたことで、あなたは俊英にも罪を犯した。男の匂いをこの子に覚えさせてしまったのだから」

蘭はららを離すと、俊英を手招きした。そして「あなたも悪い」と、蘭の前に立った俊英の頬をいきなり叩いた。蘭は、ららに向けて言葉を続けた。

「あなたは、わたしにとってかけがえのない『奉仕の羊』だった。あなたをあんなにかわいがっていた兄でさえ、わたしがあなたを所有することを認めていたのに」

ららは、内心で毒づいた。

(なにが「奉仕の羊」よ、ふざけたことを!)

蘭と性交した少年たちは、最初のうちこそ蘭の痴女ぶりを楽しんでいるが、やがて異常とも思えるその淫乱に耐えらなくなる。だが蘭は、ベッドから離れようとする少年たちの手足を縛り付け、彼らを罵倒する言葉を絞り出しては延々と浴びせ、力を失った若竿を膣に突っ込んではいつまでも犯し続けた。何時間も、何日も。ららは、そんな蘭のサディストぶりに耐えられたというだけのことだ。そんなららの思いを察したかのように蘭は、誰にともなく呟いた。

「あなたは素晴らしかった」

簡単な食事と細切れの睡眠の他に、ほとんどの時間、その身体に跨り続けていたとしても、ららは蘭の淫乱の全てに応えることができた。それにららは、蘭が迎えるアクメの中からもっとも女を昂ぶらせる「孕みの絶頂」を的確に捉え、蘭の子宮に激しい精液を浴びせかけることもできた。

ららの目をまっすぐに見た蘭は、きっぱりとした表情で言った。

「あなたには、アニマ神から「新しい光」が与えられた。あなたの排斥処分は、解かれたの。だからあなたには、わたしの元に戻って仕事を手伝ってもらうわ」


つづく


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