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プロローグ 【4】

「よかった……。とりあえず、二番目のウイルスが最初のダミーウイルスのワクチンに反応して、ワクチンを接種した人間だけが死ぬっていう設定は使えるね」

「それでららは、二番目のウイルスの散布方法をどうするか考えてくれた?」

ららのヌルヌルとした亀頭に、幼い射精感が昂まる。

「ねえ、今じゃなきゃだめ? この話」

「早く聞きたいんだ」

「二番目のウイルスの散布には、主の晩餐を使うのがいいかなって……。表象物のワインに二番目のウイルスを仕込むの。アニマは、農場や食品工場も持ってるから、ウイルス入りのワインの製造なんて簡単でしょう?」

主の晩餐は、一般的には「最後の晩餐」で知られている。十字架にかけられる前の晩にイエス・キリストは、イスカリオテのユダを含めて十二人の弟子たちに、自身の血を象徴するぶどう酒と身体を象徴する無酵母パン(アニマではこれを『表象物』と呼んでいる)を分け与えた、あの話だ。

「でも、それだと使徒会議のメンバーしかウイルスに感染しないから、感染拡大のスピードが遅い。日本政府に対抗策を取られる……」

キリスト教世界では、死後に天国で復活することを保証する表象物は、すべての信者が口にすることができるが、アニマでは違った。アニマは、死後に復活する人間を二つに分けていた。アニマ神の住む「天上の王国」に霊の身体を持つ者として復活する使徒会議のメンバーと、すべての人類が滅びた後の地球上に人間の肉体のまま復活する、その他、すべての信者に。そして、表彰物を口にできるのは、天上の王国に復活する使徒会議のメンバーのみとされていた。一般の信者がそれを口にすることは許されなかった。

「だからね、主の晩餐の前にアニマは、教義の変更を発表するの。アニマ神を信じるすべての兄弟・姉妹が天上の王国へ行けるようになりました。信者全員に使徒会議のメンバーと同じ特権が与えられますって。だから、表象物のワインをすべての出席者が飲みなさいって」

「あああッ……すごいよ、らら!」

獣のような低い声で絞り出すように呻いたのは、俊英だった。俊英は、ららを抱き起こしてうつ伏せに組みしだくと裸体をピタリと合わせ、紅色に染まったららの尻に激しくペニスを突き込んできた。

アニマ聖書冊子協会が執り行なう主の晩餐には、クリスマスイブの夕刻、信者以外の人間も含めて、日本全国で毎年十万人近い人間が参加する。これだけの数の人間が一度に第二のウイルスに感染するのだ。対抗策が取られる前にウイルスは日本中に拡散するだろう。

「らら……。第二のウイルス――そう、僕たちのウイルスに名前をつけたんだ」

「どんな、名前?」

「オクシア――。言葉の意味は、蝗だよ。黙示録に書かれている、アバドンの王のもとからやってくる、あの蝗。黄金の冠を被り、尾に蠍の針を持った、あの蝗から名前をつけた……」


(つづく)



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